産業心理学(3)
人間の内的情報処理におけるデータの保存
STEP1) 記銘(memorization) → 符号化(encoding):覚え込むこと
STEP2) 保持(retention) → 貯蔵(storage):維持すること
STEP3) 再生(recall) → 検索,再認,再生:同定または報告すること
3つの貯蔵庫
図3−1 情報の流れと記憶
感覚情報貯蔵庫: 感覚器から入力された情報をそのままの形で,ごく短時間だけ保持する.その間に新しい情報が入力されると,直前の情報と融合されて処理され,短期記憶に送られる. (融合に最適な時間間隔は0.04秒)
短期記憶と長期記憶
短期記憶(1次記憶);瞬間の出来事を直後に想起すること.7±2チャンクの容量があり,数十秒保持される.
→ 近年の研究ではワーキングメモリ(もしくはその一部)として考えられることが多い長期記憶(2次記憶);短期記憶の内容を繰り返し唱えると,徐々に長期記憶に蓄えられる.容量は無限大(108〜1015ビット?)で保持期間も数十秒から数年.
注)チャンク;記銘される情報のかたまり
図3ー2 短期記憶の保持曲線
過去の経験(心理的・行動的なもの)によって行動が変化(発展)すること
技能の学習
技能学習とは,感覚系と運動系との協応関係が未熟な段階から熟練した段階に変化していくこと
- 第1段階(知識ベース) 感覚系と運動系の協応関係が低次の段階.他人の行為を注意して観察し模倣する段階
- 第2段階(ルールベース) 意図的に技能を反復する段階
- 第3段階(スキルベース) 感覚系と運動系が協応し,高次の技能が形成され,自動化される段階
実際の仕事においてはスキルベースの行動がエラー(ミス)の原因となることがある.
習熟の影響
作業における学習は習熟という概念となる.新規の作業,改善された作業など習熟場面は多い.
新しい作業内容でも繰り返されるうちに,慣れて,上達する.
- 習熟過程では生産性が低下
- より早い習熟方法の検討
習熟後は「作業時間の短縮」,「質の向上」,「無駄な作業の軽減」が期待できる
→ 標準作業や標準時間は習熟後に設定する経験学習による問題解決行動
図3ー3 学習による問題解決
一般的に物事の改善には
- 計画(Plan)
- 実行(Do)
- 点検・調査(Check)
- 処置・改善(Action)
の4ステップを繰り返すことが必要。PDCAサイクル(もしくはデミングサークル)という。