産業心理学(5b)
ヒューマン・インターフェイスの事例(VDT作業)
パソコンを使った作業など,ディスプレイを用いる作業をVDT(Visual Diaplay Terminal)作業という。
VDT作業には特有の生体負担があるため,考慮が必要である。
視覚への負担

グラフ1 視覚作業時の視線移動の大きさと頻度
表1 視覚作業時の視線の高さ
作業の種類 | 視線の高さ(垂直眼位) deg |
文書翻訳時 | -37.4 |
製本作業時 | -28.0 |
書類解読時 | -21.4 |
VDT作業 | +2.7 〜 +11.5 |
眼球露出面積→ 机上作業時:2.0平方センチ VDT作業時:3.2平方センチ
視覚疲労の影響
- ちらつきの弁別閾値(フリッカー値)が低下する
- 焦点あわせがあまく,時間がかかる
- 瞳孔径の縮小
- 自覚症状(自覚疲労,目の乾きや痛み)
映り込み(グレア)の改善
天井の蛍光灯が映り込む |
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蛍光灯を消す |
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画面を下に向ける |
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他にも,
- ディスプレイの配置を変える
- ルーバー(仕切)付きの照明に変える
- ディスプレイ表面の質を変える
など
視覚負担の軽減策
- 画面との距離は50cm以上を目安に 文字の大きさもあわせる
- 画面の位置は高すぎない ディスプレイ上部が目線より下に
- 陽画表示(明背景に暗文字)に
- 視野内の高輝度(窓や照明)を避ける カーテンやブラインドも利用
- グレア(反射によるぎらつき)を避ける ルーバ付き照明や画面フィルタの利用
- モニタの質も重要 フラットで鮮明な画質のものを
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筋骨格系への負担
VDT作業は座りっぱなしで画面を覗く
- 拘束力が強く,静的筋活動が増加
- 脊柱,特に首と腰に負担
- 上腕の角度,手首の折れ,反り返りが不自然
対策としては
- 椅子と机の高さを合わせることが重要
- 場合によってはパームレストやエルゴキーボードの利用も
机,椅子,機器の調節
- イスの高さ → 上腕が水平になるように (通常の事務机ではキーボードの厚みの分だけ高すぎるので,イスもやや高めに)
- 足台 → 大腿部が局部的に圧迫されないように
- 画面の高さ → 視線がやや下向きになるように
その他の注意点
(参考文献)
- ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン
(http://www.ergonomics.jp/original/fpd/note_pc_guide/NP_ergoGL.html) - 斎藤進,他「VDT作業時の視線の高さ解析とワークステーション設計への提案」 日本人間工学会第33回大会講演集,1992
- 日本人間工学会主催セミナー「パソコンを快適に利用するための人間工学」 セミナー資料
- 横溝克己,他「エンジニアのための人間工学」日本出版サービス,1987
- ユネスコ・レポート「人間工学 そのインパクト」日本出版サービス,1999
- Grandjean E.「産業人間工学 快適職場をデザインする」啓学出版,1992
- Okamura, T “Keyboard characteristics and VDU operator posture” XXVII International Congress of Psychology, 2000
- Saito, S., et al. ,; “Visual comfort in using different VDT screens” Int. J. Human-Computer Interaction, 5, 1993